やっぱりすごい!柴山港 ~松葉がに職人たちの舞台~
香美町にある柴山港は、日本有数の松葉がに水揚げ高を誇る天然の良港です。長い歴史のなかで育まれた選別技術や、鮮度を保つための努力が積み重なって、信頼のブランド「柴山がに」を作り上げてきました。この特集では、柴山港に集う人々の職人技を紹介します。
柴山港について
天然の良港として、また入り江であることから国からも避難港として指定されています。山陰海岸ジオパークエリア内でもあり、風光明媚な港で四季折々の新鮮な魚介類が水揚げされます。
但馬漁業協同組合 カモメビュー
冬の荒波に負けない大型船
柴山の底曳き船7隻は全て100トン前後の大型船です。冬場の日本海は時化る(海が荒れる)日が多いため、小さな船では天候に左右され、なかなか漁に出ることができません。比較的影響の少ない大型船だからこそ、安定して松葉がにを消費者に届けることができます。漁師さんは家族や美味しいかにを待っている人たちの顔を思い浮かべながら、命がけで漁をしています。漁獲後はすぐに船上で重さや大きさを計って選り分けた後、海水槽に入れて生かした状態で港に持ち帰ります。
まさに″神業”の選別技術
松葉がにの選別基準は、重さや大きさ、色つやなど多岐にわたります。なかでも柴山がには選別が極めて厳格で、100以上の銘柄に選り分けられ、その細かさは日本一と評されるほど。漁師さんが船の上で仕分けて持ち帰った松葉がにを、さらに細かくランク分けする作業を担うのは選り手(よりて)といわれる人たちです。選り手は船主や乗組員の家族や親せきなどで構成され、船の寄港した夜中の0時頃から午前7時のセリまでの間に素早く正確に手作業で選別を行います。選別を終えた松葉がにはすぐに水槽に戻され、鮮度を保ったままセリの時を待ちます。
市場と消費者をつなぐ仲買人の目利き
柴山のセリは入札で行われます。数十人の仲買人(セリで商品を落札する権利を持つ人)が入札額を書いた木札をセリ人に向けて掲げ、セリ人は一瞬で最高値を見定めて落札させます。その後すぐに漁協のスタッフが、落札値と仲買人名を書いた紙をかにの上に置いていきます。素人目には何が行われているのが分からない程の速さで進行していくセリは、漁業者にとっても仲買人にとっても真剣勝負の場です。高く売りたい漁師さんに対して、仲買人は良いかにをできるだけ安く買いたい。これに折り合いをつけるために、等級分けが次第に細かくなっていったともいわれます。仲買人は確かな目利きと瞬時の判断で、依頼人の要望にぴったりと合う松葉がにを選んで落札します。
活へのこだわり
現在柴山港で競られる松葉がには生きているかに、「活がに」が基本となっています。船内水槽で生かしたまま持ち帰る技術は、1990年代にここ柴山から始まりました。全国に先駆けて鮮度の「見える化」を重要視してのことでした。セリ落とした仲買人はそれを持ち帰り、素早く店の海水槽に入れて次の工程に移ります。活がにでと注文を受けていた分はすぐに届けたり発送したりします。ボイルでと注文されていた分は、真水で絞めてから茹であげます。漁師、選り人、仲買人その誰もが細心の注意を払って松葉がにを扱う技術は、長年この港で培われた職人技です。
目利き10年、茹で一生
松葉がにの調理法は鍋、焼きがに、姿茹で、刺身、天ぷら、甲羅みそと多岐にわたります。その中で何が一番美味しいかと問われると、漁業者や仲買人はまず「ボイル(浜茹で)」と答えます。しかも熟練の仲買人が茹で上げたものに限り、特大サイズの鍋で姿のまま茹でて旨味を閉じ込めます。浜の人々の間では「かには目利き10年、茹で一生」というのが定説です。活がにの半分程度は茹でて出荷されるため、ボイル作業は加工屋さんとしての仲買人の腕の見せ所となります。